平成18年8月1日の新聞に3メガバンク債権下落で業務純益減 平成18年4-6月期の連結決算
大手3銀行グループが量的緩和政策解除後の金利上場による債権価格下落が響き、本業の儲けを示す業務純益がそろって減益となった。
「金利が上がると国債が下がる」とは
おそらく以前の私だったら、上記の記事をそのまま素通りしてしまったことでしょう。
ファイナンシャルプランナーの金融資産運用を勉強する中でこの2行を理解するのには日本の金融システムを理解しなければならないと実感しています。
この記事を理解するのにわたくしが思うことはこの3点です。
①日銀の役割 ゼロ金利政策、量的緩和
②国債(債権について)
③利回り
3回に渡って掲載していきたいと思います。
1回目の今回は、日本銀行の役割 ゼロ金利政策、量的緩和 (第1回)
日本銀行の使命は、物価(通貨価値)の安定と、お金が世の中に安定的に流れる仕組みを保つことにあります。
日本銀行は、「銀行の銀行」といわれます。一般の銀行の預け入れ先が日銀だからです。
私たちが銀行に預金口座を持っているように、一般の銀行も日銀に口座を持っています。ただし、この口座は利子がつかない当座預金口座です。この口座の預金残高が一般の銀行の手元資金量を示すことになります。(日銀HP 日銀当座預金残高)
一般の銀行の決済にこの口座を使います。例えば違う銀行にお金を振り込むときは、日銀にある銀行の当座預金口座間でやりとりしています。
日銀は、日本の金利全体のコントロールをしています。一般の銀行が日銀から資金を借りるときの金利を「公定歩合」といいますが、この公定歩合を決めることで、全体の金利をコントロールしているのです。(注:現在は基準割引率になっています。加筆)
一方、金融機関の間で資金の融通しあう市場を「コール市場」といいます。(自由市場)
金融機関は日々、多額の資金が不足したり余ったりするので、これを調整するためにコール市場があります。余った資金を手元に置いておくよりもコール市場で取引して、貸している銀行は、そこで利益を得ようとしています。
その市場で、無担保で借りて翌日に返す。ごく短い期間で取引される資金の金利でコールレートと言います。(無担保コールナイトオーバーナイト物)
日銀の役割である物価の安定を図るために景気が悪くなると、金利を下げてお金を借りやすくして事業に設備投資等して景気をよくする。景気が過熱すれば、金利を上げて市場に出回るお金を吸収します。
日銀は、この金利を動かすのに手形や国債などを銀行などとの間で売買する「公開市場操作(オペレーション)」と呼ばれる手法を用いています。国債などの売買を通じて市場の資金量を増やしたり、減らしたりして金利を動かしています。
平成13年3月にこの金利をほぼゼロの状態にしました。(2回目)これがいわゆるゼロ金利政策といわれるものです。
ちなみに1回目のゼロ金利は、平成11年2月に導入され平成12年8月に解除されました。
コール市場の金利を限りなくゼロに近づけると銀行がただ当然の金利で資金が調達でき、その資金を企業や個人に貸し出す際の金利も低くなります。
企業は借入利率が安くなったので設備投資や運転資金に前向きになり、個人も金利が安いことにより住宅の購入意欲も高まり景気が良くなります。
金利をゼロにすることは世界でも異常なことですが、それでも景気がよくならないので平成13年3月19日金融政策決定会合で、金融市場で金利を調整する方法に代えて「資金量(日本銀行当座預金残高)」で調整する方法に代えました。
これが「量的緩和」と言われるものです。これもまた異常な金融政策です。
当初資金量4兆円を5兆円に増やすことを目標にしていたのですが、平成17年には30兆円前後になっていました。この異常の状態が5年間も続いたのです。(日銀のHPで残高を調べることができます)
まずは量的緩和解除
平成18年3月9日まで5年間にわたって続けた「量的緩和政策」を解除しました。
平成18年8月10日現在の日銀当座預金残高は8兆8700億円です。
ゼロ金利解除
平成18年7月14日にゼロ金利を解除しました。
ゼロ金利解除により、金融機関に国債などを売却して市場に出回る資金の吸い上げに動く。市場の資金が少なくなるので、手元資金が不足している金融機関は少々高い金利を払ってでも資金を調達することになり、金利は上昇する。
無担保コール翌日物金利が上がれば、中長期を含む金利全体が上向きに向かう。企業が銀行から借り入れる資金の金利も上昇し、住宅ローンや自動車ローンなどすべてのローンに上昇圧力が加わる。一方で、預金金利も上昇し、家計の利子所得が増加する効果もある。
この金融政策が吉とでるかどうかを見守っていきたいです。
次回は国債の話をします、公開市場操作で国債の売買が出てきます。
参考:
日本の公定歩合(基準貸付利率)は
平成13年 9月19日~平成18年 7月13日 0.10%
平成18年 7月14日~平成19年 2月20日 0.40%
平成19年 2月21日~平成20年10月30日 0.75%
平成20年10月31日~平成20年12月18日 0.50%
平成20年12月19日~今現在 0.30% (平成22年加筆)
一方アメリカの公定歩合は、平成16年6月末に2.25%に上げ現在まで利率見直しの会議で毎回0.25%づつ上がってきました。
ただ平成18年8月の会議では利上げなしで現在の6.25%に据え置きされました
現在は、0.25%以下です。
第2号 「金利が上がれば国債が下がる」とは 第2回 平成18年更新
まず、前回で日銀の役割のひとつでオペレーションの話を軽く取り上げました。
今日はその続きで 国債(債券について)です。最後は利回りの話で終わります。
ポイント
日本銀行が金利の調整で公開市場操作(オペレーション)を行うとは
日本銀行が銀行に国債、有価証券を売る (売りオペレーション)
市場に資金がいきわたり、コール市場から資金を調達する必要がなくなるため、金利が下がるといわれています
ポイント
日本銀行が銀行から国債、有価証券を買う (買いオペレーション)
市場から資金を回収することにより、市場に資金が不足して、コール市場では金利が少しでも上がっても借りたいと思うために金利が上がるといわれています。
このように金融機関が国債を売買しています。
国債は、政府が発行します。財務省の資料によると
平成9年3月末現在 約248兆円
平成18年3月末現在 約671兆円 (この9年間で423兆円増加しました。)
ちなみに1年間の租税及び印紙収入約45兆円(平成18年度予算案)
平成15年3月に「個人向け国債変動10年」がスタートしました。販売対象が個人に限定されています。
特徴は「10年満期の最低クーポン保証付変動金利型国債」
平成18年1月には「個人向け国債 固定5年」の募集が始まりました。
その特徴は「5年満期の最低クーポン保証付固定金利型国債」です。
年4回の発行です。(1月、4月、7月、10月)個人のみが購入できます。
平成22年加筆 3年固定の個人向け国債が平成22年6月から販売
国債も個人で購入することが出来ましたが、なぜこれほどの人気があるか?
(個人向け国債の変動10年型をメインに話を勧めます)
第1に金利 従来の長期国債は固定金利であり、発行時の利率が償還まで変わらないのに
対して、個人向け国債は半年に1度の頻度で、その時点の市場金利を参考にして適用利率が見直されます。
個人向け金利=10年固定利付国債の入札結果により算出される基準金利-0.80%
利率に関しても最低金利保証があり、0.05%の金利が保証されています。
平成18年10月に発行する個人向け国債(第16回債)の初回適用利率が決定しました。
最初半年の適用利率を年0.92%にすると発表 (基準金利1.72%)
第2に元本保証 固定金利型の長期国債も償還まで保有すれば元本保証されます。
ただ途中売却する際は、そのときに市場で形成されている債券価格で売却になります。
(購入時よりも金利が高いと、売却損を被るおそれが出てきます。3回目で解説)
個人向け国債は、原則として購入から1年経過時点で財務省が額面金額で買い取ってくれます。ただし、解約に関しては直近2回分の税引き前の利子が差し引かれます。
額面金額+経過利子相当額-直前2回分の利子(税引前)相当額
第3に最低購入金額 従来の国債は、金融機関が主に購入していました。一般の方でも銀行や郵便局で購入できます。従来の国債は、額面金額が5万円、個人国債の額面金額は1万円。より少額資金での購入が可能です。
次回の金利を説明するにあたって、国債は、従来からある国債と個人向け国債があり、途中売却に関して、国債は市場で取引されており、個人向け国債は財務省が額面金額で買い取ってくれます。市場では取引されていません。国債は市場で債券価格が決まります。
上記で述べたように、公開市場操作で国債等の売買を行います。
そのときに短期の売買のため、銀行は債券の評価を時価評価で表します。
銀行の決算書では、その他の業務利益の中の国債等債券関係損益で表示されます。
コラム:(理解の参考に)
前回の文章で公定歩合と書きましたが、現在ではこの言葉を使わなくなりました。
日本銀行は、「基準割引率および基準貸付利率」に名称変更しました。これは1994年に金利自由化になり、各種の金利が「公定歩合」に直接的に連動しなくなったためです。
現在の日本銀行の政策金利は、無担保コールレートであり、「公定歩合」には政策金利としての意味合いはありません。こうした点を踏まえて、「基準割引率および基準貸付利率」という用語を使用することとしました。(2006年8月11日 HPより抜粋)
過去において預金金利がすごい商品は、郵便局の定額貯金でした。
平成2年9月から平成3年7月までの10年定期 6.33%
半年複利で10年ものですと100万円預けて、約169万円(税引き後)になります。
銀行の決算書 (一般企業と違うところ)
貸借対照表は
現金預け金が資産の部にあります。(「現金」と「預け金」に分かれています。預け金は日銀の当座預金となります。)
預金は負債の部にあります。(一般の方から預った現金、当座預金等)
損益計算書では
業務粗利益 (一般企業で言えば、売上粗利益に相当するもの)を分類すると
「資金利益」(貸出金、預金、有価証券などの利息収支等)
「役務取引等利益」(手数料収支等)
「特定取引利益」(特定取引勘定設置行のみ。トレーディング勘定におけるデリバティブ取引等による売買損益および期末の評価損益)
「その他業務利益」(債券等関係損益、外国為替関係損益等)
参考:日銀、財務省のホームページ
「金利が上がれば国債が下がる」とは 第3回 平成18年更新
金利と債券の話です。今回でこの話題は終わります。
「お金は少しでも有利なほうに流れる。」これにつきます。
投資家は利回りをもとに投資をしていきます。投資が株式会社、国債、もちろん外国投資も行うことがあります。
利回りとは、自分の投資した金額(元本)に対してどのくらいの利益が出るのかを年率であらわしたものです。
ここでは、最近発行された10年物国債について具体的に見てみます。
平成18年9月20日発行、平成28年9月20日償還 額面5万円
利率: 額面に対して年に何%の利子がつくかの割合、発行時に決定 クーポンともいう。
表面利率1.7%
利息(利子): 利率により実際に支払われる金額 半年ごと3月、9月に利息として受け取ります。
(この場合は 額面5万円に対して425円(税引き前)半年ごと)
利回り: 自分の投資した元本に対して、年に何%の利益がでるかの割合、%
平成18年10月24日 1.815% 単価99.04 ブルームバーグ公社債基準価格(BBYF)より単価とは100円の額面に対して99.04円で取引されています。
債券の購入について
- 新規に発行されたときに購入し、満期日まで保有する
- 新規に発行されたときに購入し、満期日前に売却する
- 発行後途中で購入し、満期日まで保有する
- 発行後途中で購入し、満期日前に売却する国債は金融機関、証券会社、郵便局で購入することが出来ます
国債は金融機関、証券会社、郵便局で購入することが出来ます。
発行後、満期日までの間は債券の価格は変動します。債券も満期日まで持っていれば最終的に額面金額で資金を返してくれますが、満期日前に売買すると、価格は額面金額を下回っていることもあれば、上回っていることもあります。利息は毎年決まった利息をもらえます。
国債、地方債、社債をする際のポイントは、毎年決まった利息をもらえて(利息収入の確定)、償還日にはしっかりと額面で償還される(元本の安全性)という2点です。
長期金利とは、この最近発行された10年物の国債の利回りのことを一般的に表します。
長期金利は短期金利とは連動していません。長期資金の需要と供給の市場メカニズムで決定されます。また将来の短期金利の推移などの予測で決定されます。
上記の国債の表面利率は1.7% 長期金利が平成18年10月24日時点で利回りが1.8%ほどです。
となると債券の価格を低くすることにより利回りを1.8%近くまで持っていくことができます
債券の値動きと金利動向を見るうえでもっとも大切でしかも混乱しやすいことは、その動き方が逆であるということです。
日銀のホームページに長期金利の決まり方の長期金利を左右する「予測」の事例が分かりやすいかと思います。
メモ
○ 金利(利回り)上昇 → 債券の価格(価値)下落
○ 金利(利回り)低下 → 債券の価格(価値)上昇
記載時のデータを比較してみると 平成18年10月23日頃
10年長期国債 利回り 1.815% (表面金利 1.7%)
(個人が購入時に証券会社等の手数料がかかるのでもう少し利回りが下がると思います)
個人向け国債 10年変動 利率 0.92%
(期間中の買取は日本政府のみ 利率が半年ごとに変更)
個人向け国債 5年固定 利率 1.13% 5年間固定
スーパー定期預金 10年 利率 0.795% (半年複利)
300万円以上 5年 利率 0.582% (半年複利)
定額貯金(郵便局) 3年以上 利率 0.30% (半年複利)
参考:日銀、財務省のホームページ
利率は経済状況によって変化します。利率と利回りの違いをよく理解して資産運用を行ってください。
金利は一つの時点だけでは判断できず複数の要因が絡んで変わってきます。
7月末に長期金利が下がりました。ゼロ金利解除後に長期金利が上がると言われていましたが、消費者物価指数が思っていた以上に上がっていなかったため長期金利が下がりました。サプライズよって金利は変わってきます。