数字で見る相続について 過去のデータ集
今回のテーマは相続についてです。数字のデータをメインにして説明をいたします。
① 相続放棄の件数
人 | |
令和 元年 | 225,415 |
平成30年 | 215.320 |
平成29年 | 205,909 |
平成28年 | 197,656 |
平成27年 | 189,296 |
平成26年 | 182,082 |
平成25年 | 172,935 |
平成24年 | 169,300 |
平成20年 | 156,312 |
平成17年 | 149,375 |
平成16年 | 141,477 |
平成15年 | 140,236 |
平成10年 | 83,316 |
平成 7年 | 62,603 |
平成 5年 | 58,490 |
昭和60年 | 46,227 |
昭和50年 | 48,981 |
昭和40年 | 110,242 |
昭和30年 | 142,289 |
昭和24年 | 148,192 |
相続放棄受理件数 司法統計年度より(裁判所のHPより 家事 2家事審判・調停事件の事件別新受件数 全家庭裁判所より抜粋)
昭和22年5月2日の相続までは旧民法の家督相続が行われていました。よって長男以外の方が相続を放棄していました。また地方に関しては古い慣習から昭和40年までは相続の放棄が10万人以上ありました。平成5年から放棄の件数が年々増えているのは?
考えられることは
財産よりも負債が多い
人間関係が複雑になり、放棄したほうがいいと思ったとからだと考えられます。
(分析課題として残しておきます)
今、年間約130万人の方が亡くなっています。相続税の申告件数はゼロ申告を合わせて約15万件です。ただ相続は申告があるかないかにかかわらず発生します。
事例(他の税理士から聞いた話です)
ご主人が亡くなりました。負債が多かったため、妻と子供は相続を放棄しました。
その相続発生時には両親がともに亡くなっていました。この場合の相続人はご主人の兄弟が相続人となります。このとき亡くなった日から3ヶ月が経っていました。そのときに消費者金融から相続人である兄弟に借入金を支払えと言ってきました。
この場合は、弁護士に相談して和解してもらうしかないとのこと。
兄弟といってもなかなかお互いの資産状況というのは分からないため事前に連絡することも大切ではないでしょうか。
② 相続税のかかる割合は死者数の約5%
平成17年の死者数 | 1,083,796人 | |
平成17年の出生数 | 1,062,530人 | 当期の人口は 21,266人減少 |
平成16年の死者数 | 1,028,602人 | |
平成16年の死者数 | 1,110,835人 | 当期の人口は、82,233人増加 |
厚生労働省の人口動態統計資料より 死者数は、平成17年と平成18年の資料で確認
平成17年度に死者数と出生数が逆転しました。よって日本の人口は徐々に減っていきます。
平成16年度の事例でみると死者数約103万人
相続税の申告をした被相続人の数 約4万3千人
相続税がかかる割合 4.2% (国税庁の資料より)
このデータは、基礎控除額が5,000万円+1,000万円☓法定相続人の数のときのデータです。
平成27年1月以後に相続が発生した場合から基礎控除額が6掛けになり、相続税のかかる割合は増加しました。
直近の資料からいけば、令和1年12月に平成30年の資料が発表されました。
この資料によると
平成30年分 亡くなった人の数 1,362,470人
相続税が発生した人数(亡くなった方) 116,341人
ほかに、相続税は発生しないのですが、相続税を申告した方(亡くなった方)33,140人
私が注目しているのは、この相続税は発生していないのですが相続税を申告した方です。
特例等を使って、相続税がゼロになったと考えています。
または礎控除額以下に限りなく近いので、微妙の選なので申告をしておこうと思う方が考えられます。
よって、申告数のベースで見てみると 10.9%の割合です。
一般的には、相続税の課税割合は、8.5%です。(こちらの方ばかり注目されています。)
あとは、東京は土地の価額が高いためにもっと比率が高まると思います。
③ 調査があれば約9割は追徴税額あり
平成16年7月から平成17年6月における相続税の調査件数は 13,760件
のうち申告漏れ件数11,895件(約86%)
相続における対策は、事前に準備することが大切です。
相続が起こってからでは遅すぎます。家族構成や持っている財産、債務によって問題点が違ってきます。事前に会計事務所に相談することをお勧めします。
相続設計における重要な3要素
① 財産の移転対策
誰が、どの財産を、どれだけ
遺言書の有効性も分かりますが、生前、配偶者や子供達を全員集めて、自分の考えとともに財産の分け方について面と向かって話すほうが大切かと思います。そのためには自分自身がどんな財産を持っているのかを知る必要があります。
② 評価引き下げ対策
所有不動産に賃貸物件を建築する
「更地に借金をして賃貸物件を建てると相続税の評価額が下がる」という人がいます。
これは二つの部分に分けて考える必要があります。
賃貸物件建築は財産評価が下がります。しかし借入をしても評価額は下がりません。
また、賃貸経営をすることは不動産オーナーになるわけですから、経営者として儲かるように考えて投資をおこないましょう。
簡単な例ですが
2億円の現金があり、1億円の物件を現金払いで建てた場合の財産・債務
現金 1億円 建物 1億円 (財産評価額:6000万円)
2億円の現金があり、1億円の物件を借入金で建てた場合の財産・債務
現金 2億円 建物 1億円 (財産評価額:6000万円) 借入金 1億円
正味財産はどちらも変わりません。評価が下がるのはあくまでも賃貸物件や貸家建付地の評価額です。借入金により、現金が増えてそれを投資したという形になります。
他にも受取生命保険金の非課税枠利用 (法定相続人1人につき500万円)
小規模宅地等の評価減、自社株の評価下げ、年金権利の評価(税制改正あり)、養子縁組、生前贈与
③ 納税財源対策
現金納付、延納、物納、生命保険による納税資金準備
物納に関しては、現金納付や延納が困難な場合に限ります。
物納に関しては平成18年度に税制改正が行われて物納をしようと思う場合は事前に準備しておかなければなりません。
改正前:物納申請書と金銭納付が困難とする理由書の2枚だけ申告期限までに提出
改正後:物納申請書と金銭納付が困難とする理由書、登記事項証明書、測量図、境界確認書等
を申告期限までに提出
生命保険金の請求にも時効があります。
商法の規定では2年 保険会社の普通保険約款では3年となっています。これも事前にどんな
保険に加入しているのかを確認しておくべきでしょう。
この3つのバランスが大切です。
財産評価を下げることばかりに目を向けないで、将来生じるメリットやリスクを考えて相続対策はおこなわなければなりません
相続が発生した後のワンポイントアドバイス
会計事務所では、亡くなった方の相続申告までおこないますが、その後の生活設計まではなかなかアドバイスが出来ていないのが現状です。
請求しないと給付金が受けられないもの
①生命保険金の給付
生命保険会社に電話をして必要書類を確認してください。そのときに手許に保険証券を用意してください。(時効は3年となっています 生命保険の場合)
会社などを経営している場合は、その経理の方に聞いて確認してください。
②葬儀費(埋葬費)の給付
国民健康保険の場合
支給対象 : 被保険者が死亡したとき
支給金額 : 5万円
提出先 : 死亡者の本籍地または届出人の所在地の市役所
手続き時に必要なもの : 保険証、印鑑、埋・火葬許可証、申請者の銀行通帳(口座振込を希望される方)、申請者本人の確認ができるものなど
死去してから、病院から死亡診断書をもらい市役所に提出
* 以上いずれも、申請できる期間(時効)は事実のあった日から2年以内です。
* 内容はいずれも令和2年5月1日現在のもので、改定される場合があります。大阪市の場合です
大阪市の場合は、区役所保険年金業務担当に申請します。区役所にいけばどこの窓口に行けばいいか教えてくれます。
政府管掌の健康保険
本人:5万円 扶養家族:5万円
令和2年5月1日現在
被保険者より生計を維持されていた方が、いない場合は、
(例えば、子供が独立した場合に万が一に亡くなった場合は、その両親が埋葬を行うと思われます。)
そのときは、実際に埋葬を行った方に、5万円の範囲内で実際に埋葬した費用を支給します。
葬式一式、霊柩車代、運搬代、霊前供物代、火葬料、僧侶の謝礼で5万円は間違いなく超えると思います
あびこから近い斎場は、
瓜破斎場 大阪市民の場合は1万円、大阪市民以外は60,000円 (10歳以上の場合)
待合室の料金有
堺市斎場 堺市民20,000円、堺市民以外 100,000円 (12歳以上)
待合室の料金あり
国民健康保険、社会健康保険とともに加入者が亡くなった日から2年以内に申請しなければ権利が失効します。
死亡者の準確定申告
死去してから4ヶ月以内
遺族年金の申請
国民年金を加入している人は、「遺族基礎年金」「寡婦年金」「死亡一時金」があります。
保険金の年金払いに対する課税について、
年金の受取額の方法により、課税関係が変わってきます。
保険事故が発生する前に、年金でもらう契約をしてもらう方法と
保険事故が発生した後に、一時金でもらうのを辞めて、年金という形でもらう方法
①保険事故が発生したときに相続財産と課税
②年金としてもらうときに所得税の雑所得で課税されます。
つまり保険事故が発生したとき と 年金の受給が生じているときの2回課税の対象となります。
保険金で年金を受け取る行為が死亡事故前か後の契約かで税務の処理が違ってきます。
裁判事例
長崎県の地方裁判所(平成18年11月7日判決)で、相続発生時に相続税がかかってみなし相続財産として年金受給権が課税されていながら、その金額とは関係なく所得税を課税することは違法となりました。最高裁で違憲となり、年金受給権に関しては運用した部分に関して雑所得がかかるようになりました。
いづれにしても、生命保険に加入するときは、受給時の課税を考えなければなりません。
過去の事例でこんなことがありました。
お母さんが、息子を被保険者として保険金に加入しました。息子さんはまだ若かったので保険料も安く保険金は確か8000万円の保険でした。保険契約をして1年も経たないうちに交通事故で亡くなってしまいました。受取人はお母さんでした。
そこで相談があり、この場合は一時所得になり所得税が1100万円ほどになったかと思います
もちろんそのお母さんは驚いてしまいました。この件をみていますと契約前に事前に相談があれば対処できたかもしれません。
この時期、年末調整で保険料控除証明書を見る機会が多いですが、その内容をご存知ですか?
一度加入した保険会社あるいは会計事務所に聞いてみたらどうでしょうか?
相続税の計算方法のしくみを考える
もらった財産に対して相続税がかかりますが、この計算をするのに2ステップがあります。
1.相続財産の価額の合計額から法定相続分の数に応じた基礎控除分(現在では3,000万円+法定相続人一人につき600万円)を控除する。
2.1で出した金額をもし、法定相続人が法定相続分に相続したとみなして、その相続財産に税率を掛けます。
3.2で計算した金額の合計額が相続税の総額です。
4 相続税の総額を実際に取得した割合に応じて税負担をする。
詳しいことは、会計事務所に聞いてください。
よって、仮に現金を1,0000万円を相続した場合においても、その亡くなった方の財産の価額によって大きく変わります。
相続税がゼロの場合もありますし、半分ぐらいが相続税になる方もいます。
法定相続分で取得したと仮定した場合の相続税の総額を決定することを忘れて話をすることが多いです。
ときどき相談も受けますが、「誰々さんは、相続税かからないって言っていたけど、自分も同じ金額なのでなぜかかるのか?」
もし、不安でしたら事前に専門家に話をしてみたら、事前対策ができるかもしれませんね。